拍手ログ(梓絵)、タイトルはお借りしたものです

時間も忘れて

甘い口づけが降ってくる。

梓さんにキスをされる時、こう表すのが一番しっくりくる気がする。

人前で触れ合うのが好きではないのか、
梓さんは家族がいる空間ではあまり触れてこない。

その代わり、二人きりでいる時は意外なほどべったりくっついている。
わたしの部屋か梓さんの部屋にいるときは、特にそうだ。

最初は、隣同士で座るだけ。
次に、手を繋ぐだけ。
あとはなんとなく話をして、お茶を飲んで、また話して。
それから、話をしているうちにお互いに無言の時間が続いたら……それが、キスの合図になっていた。

「絵麻……」

優しい声色で名前を呼ばれ、梓さんの方へ顔を向けた。
梓さんの顔が近づいて、わたしの唇に梓さんの唇が重ねられる。
唇同士が触れるだけの軽いキスでも、わたしの息を上がらせるには充分だった。

「……は、……ぁっ」

梓さんがわたしの肩に腕を回し、お互いの距離をぐっと縮める。
そしてわたしの瞼や頬、色んな場所にキスをし始めた。
繋いでいた手の指と指を絡めて、だんだん体が密着していく。
部屋に響いているのはお互いの吐息と、唇が触れる音だけ。
こんなに静かだと、早鐘を打つ心臓の音まで梓さんに聞こえてしまいそうだ。
でもまさか心臓の音を抑えるなんてできなくて、思わずぎゅうっと目を閉じていると梓さんが微笑む気配がした。

「……かわいいね」

下唇を軽く噛まれ、ぞくぞくと震えて目を開ける。
目の前にいるのは、微笑んだ梓さん。
その笑んだ瞳に捕らえられたように、わたしは身動きが取れなくなった。

そんなわたしを見て、梓さんは眼鏡を外しながら
もう一度わたしの顔や首筋にキスをする。

甘い口づけに、時間も忘れて。
わたし達は思い返せば恥ずかしいくらい、ずっと唇を重ねていた――