付き合ってないけど仲のいい双子絵麻です

Year in and year out

――あと少しで、新しい年が始まる。

大晦日。
いつもより豪華な夕食を済ませて、年越し蕎麦も食べた後。
あとは新年を迎えるだけの状態になった時、サンライズ・レジデンスの広いリビングで
わたしは二人のお兄ちゃんに挟まれていた。

左側には、椿さん。
右側には、梓さん。
二人はわたしの両脇に座って、なぜかわたしと手を繋いでいる。
この歳になってお兄ちゃんと手をつなぐことに、恥ずかしさを感じないわけではないけれど……。
繋いだ手からは二人の体温が伝わってきて、心地良い。

「明日は初詣行こーね」
毎年大晦日恒例のお笑い番組を見ながら椿さんが口を開く。
「来年の初詣、今年こそ職質されませんように! ってお願いしよっと」
笑っているけどどこか真剣なお願いごとに、梓さんが反応した。
「僕も椿が職務質問されないようにお願いしようかな……あ」

他のことを思いついたように梓さんが黙ると、椿さんは少しの間も見逃さずに身を乗り出して問いかけた。

「なになに? 俺のことより大事なお願いでもある?」
「椿のことはもちろんだけど……絵麻が幸せな日々を過ごせますようにって」

「じゃあ、椿さんが職質されませんようにってお願いはわたしがします」
梓さんの代わりに……と、そう思って言った瞬間、
「ほんっと、キミってかーいい! 俺も絵麻の幸せをお願いしよ!」
ぎゅっと抱きしめられて、椿さんの広い胸に顔を埋める形になった。

「わっ……!」
「椿、彼女が困ってるよ」
息苦しさにもがいていると梓さんの手が伸びてきて、べりっと椿さんが引き剥がされる。
「大丈夫?」
「は、はい」
一緒に暮らし始めてからしばらくたって、椿さんのスキンシップにも慣れたつもりだったけど、
急にやられてしまうと心臓が持ちそうにない。

跳ね上がった心拍数をなだめていると「ねえ」と左右から声がした。
次に降ってくるのはわたしが大好きな、甘くて優しい、お兄ちゃん達の声。
「キミのことが大好きだよ」
二人の声が同時に耳をくすぐっていき、身悶えそうになる。
「わたしもです……」
小さな声で返事をすると、二人は嬉しそうに笑った。

(わたしも明日の初詣では、来年も二人が幸せな日々を過ごせますようにってお願いをしよう)

かけがえのない家族と共に過ごす穏やかな時間に、確かな幸せを感じつつ。
ゆっくりと近づいてくる新年の足音に耳を澄ませた――